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コロナ直撃から驚異のV字回復への処方箋

ニューノーマル企業等の活用事例意識・価値観

2020年5月25日の緊急事態宣言解除を受け、東京都は感染状況も踏まえた上で、6月12日0時から「ステップ3」に移行し、都民に警戒を促す「東京アラート」を解除しました。飲食店の営業は夜0時まで可能となり、カラオケや漫画喫茶の営業自粛要請も解除。ライブハウスと接待を伴うバー・スナックなどの飲食店については、12日以降も休業要請が出されていますが、国の方針と、業界団体によるガイドライン策定をふまえ、6月19日以降には休業要請を解除しました。

着々と経済は動き始めていますが、帝国データバンクの調査によると、 コロナ禍が日本経済に残した傷跡は甚大です。

「新型コロナウイルス」の影響を受けたとして業績予想の下方修正(連結、非連結)を発表した上場企業は6月17日までに累計803社(出典:帝国データバンク「新型コロナウイルスの影響による上場企業の業績修正動向調査(2020年6月17日時点)」

倒産件数は758件、8カ月連続の前年同月比増加。
負債総額は1614億6700万円、2カ月連続の前年同月比増加。
出典:帝国データバンク「倒産集計一覧 2020年 4月報」

しかし一方、その様な状況下でも、コロナショックの直撃を受け、大幅に業績悪化したにも関わらず、短期間で対策を打ち出し、その影響を最小限に留めた企業も存在します。

過去数々の伝説を残してきた「日本マクドナルドホールディングス株式会社」が、またもや新たな伝説を産み出しました。その概要については、最近、業界内外で話題になっているので、Googleで「マクドナルド、コロナ、回復」で検索して頂ければ情報は沢山出てきます。では、どの程度の回復なのでしょうか?

日本マクドナルドホールディングス株式会社が公式サイトで発表している2020年6月4日付の「月次 IRニュース」によると、5月は、全店売上高が前年同月比15.4%増加、既存店売上高が前年同月比15.2%の増加となっています。下のグラフは、その資料の数値を私の方でグラフ化したものです。

★対前年同月比増加ポイント

2月

3月

4月

5月

全店売上高(%)

15.4

0.5

6.7

15.4

既存店売上高(%)

14.7

-0.1

6.5

15.2

コロナ直撃を受けた業界では、コロナ前のトレンドを維持するのも至難の業の状況下、4月の時点で既に、”維持”どころか、昨年の同時期の実績を抜き去り ”対前年増” を達成しているのは驚きです。
しかし世の中、マクドナルドの様にコロナ禍の影響を抑えられた企業ばかりではありません。

緊急事態宣言解除後、青空にはブルーインパルスの航跡が弧を描き、夜空にはサプライズの花火が全国で打ちあがって、世の中の雰囲気は一気に原状回復のムードにシフトしましたが、それに水をさすように新型コロナウィルスの確定患者数は緊急事態宣言解除後、収束どころか増加し続け、第2波の懸念が出てきています。

下に、厚生労働省が発表している「新型コロナウィルスの確定患者数」を、私の方でグラフ化してみたのでご覧下さい。とても収束という雰囲気ではない事が、このグラフからも見て取れます。患者数の増加は、7月以降むしろ「加速」しているようにも見えます。


まだまだ、外出依存度の高い「外食、旅行、レジャー、店販系商材」等のカテゴリー企業やその周辺業界には、コロナショックの直撃をまともに受け、苦しんでいる企業が多いでしょう。そして、上記の状況をふまえると、今後は更に厳しい状況がやってくる可能性があります。苦境に立たされる企業は、今まで以上に増えてくるかもしれません。

そのような状況下、先に挙げた日本マクドナルドホールディングス株式会社の様な企業のケーススタディが参考になります。彼らは一体何をしたのでしょうか?

その概要は、先ほど挙げた「月次 IRニュース」に記されているので、そちらをご覧頂ければと思いますが、そこから得られる「コロナ禍対策」に必要な事柄は大きくは2つです。

★1つは「新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組み」を迅速に行い、更にそれをしっかり周知することで、消費者の不安払拭に向け、店内・外でのコミュニケーションをしっかり行ったこと。
★もう1つは「消費者の不安」によって変化したニーズに合わせた新商品やサービス開発を行い、告知・販促策を極めて短期間のうちに投入する判断を行ったこと。
(例:リモートワークの増加により、家族全員分の注文等が多い持ち帰り/ドライブスルー/デリバリー関連のセット商品、特典、スマホサービス等の投入&告知 etc.)
これら2つの歯車をハイスピードで嚙合わせる事で、コロナ直撃の状況下でも迅速にその影響を最小限に抑え、4、5月の業績UPに繋がったのです。

ここで「消費者の不安」には2つあります。下記の2つの「消費者の不安」を払拭できるかどうかが、V字回復のポイントになってくるでしょう。

《2つの消費者の不安》
1.”感染したくない/感染させたくない”:「感染回避」マインド
2.”今、あそこに行くと悪者と思われる”:「誤解回避」マインド

「感染回避」マインド、「誤解回避」マインドの2つの不安を取り除く店内・外でのコミュニケーションが、店から離れた客を呼び戻すためには必要不可欠です。

《「感染回避」マインドへの対応》
「感染回避」マインドにより、今後は「Take Out需要常態化」と「感染防止推進店舗への来店集中」の傾向が出てくる可能性があり、感染防止の店内での工夫に加え、それぞれのニーズにしっかり対応したマーケティングインフラの構築がV字回復の要件の1つになります。
特にマーケティングインフラについては、ある企業のCEOが「この 2 ヶ月で 2 年分に匹敵するほどのデジタルトランスフォーメーションが起こった」と語ったように、D2C、OMO、DX等の言葉に代表されるデジタル化を、短期間で一気に加速させる必要があるでしょう。

《「誤解回避」マインドへの対応》
「誤解回避」マインドへの対応については、一時、サーフィン、パチンコ、ライブハウス等が槍玉に挙がった事からも分かるように、必要なのは「外出・3密業態の “悪者” イメージの払拭」です。
勿論、実態としてしっかりとした感染回避努力をする事が前提ですが「しっかりとした感染回避努力」をしても、それを消費者に告知・見える化するコミュニケーションの努力をしなければ、迅速な客増加は望めません。
これについては「個別企業の感染防止努力の周知」だけでなく「業界全体の感染防止努力の周知」の両輪が噛み合う事で、“自社努力による安心感の向上” と “利用者が世間から後ろ指を指されない環境作り” が可能になり、来店障壁を低減することで、消費者の消費者の来店を後押しする事になります。
その様な ”環境作り” を行う意味も含め、スーパーや飲食、スポーツなど81の業界団体は、コロナ対策ガイドラインを策定しました。その内容は「内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策のページ」でまとめられていますが、その様な感染防止ガイドラインの策定や、東京都新型コロナウイルス感染症対策本部が発行した「感染防止徹底宣言ステッカー」の様な施策も、「感染防止努力」を ”見える化” し「誤解回避」するコミュニケーション施策の一環と言えるでしょう。

以上、コロナ禍におけるV字回復には、
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1.「消費者の不安」払拭に向けた、店内・外での周知コミュニケーション
2.「消費者の不安」によって変化した新たなニーズに合わせた商品・サービス開発とその告知・販促策の迅速な投入
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の2点が重要なポイントになります。

世の中には、コロナバブルなどという言葉も耳にする事もありますが、未だ苦境に立たされている企業も多いでしょう。しかし、その様な状況下でも、コロナ禍の影響を最小限に抑える事に成功した企業は確かに存在しており、出来る事はまだまだ色々あるはずです。
しかし、特にコロナ禍以降、社会や消費の状況は、目まぐるしく変化しています。一旦業績が回復しても、常に状況変化をウォッチし、迅速に対応策を実施してゆかないと、再び業績は悪化する可能性があります。
この未曽有の危機にただ振り回されるだけでなく、1社でも多くの企業がV字回復し、持続可能な事業成長を実現出来る事を切に願っています。

統合チャネル戦略センター データソリューションユニット データソリューション企画・開発グループ

統合チャネル戦略センター データソリューションユニット データソリューション企画・開発グループ

横山 猛(よこやま たけし)
統合チャネル戦略センター データソリューション企画・開発グループ、シニアアナリスト。店販・通販企業を含む幅広い分野で、オン・オフ統合データドリブンマーケティングを中心とした、戦略・ソリューション企画全般(事業コンサルティング、マーケティング、メディアプランニング、CRM、データ解析、CRディレクション等)及び、R&D・サービス開発に従事。

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