コラム
「独り言だと思ってた全部、 ちゃんとこの子に届いてたんだ。」
ちいさいきみと –ちいきみ– 【第6話】
2025.11.27


子どもが生まれた、コピーライター10年目。ちいさいきみと見ている景色を言葉と絵にして。
育児同志に、「ホッ」を。仕事仲間に、「へぇ!」を。あなたの励みになれたら嬉しい、
フリーペーパー『ちい告』のスピンオフ企画です。

子はやっと、2歳を過ぎた。母になって私も2年。いつが一番大変だったかと聞かれたら、私は迷わず「0歳の頃」と言うだろう。日中は基本的に、子どもとふたりきり。当然、言葉はまだ伝わらない。だからって、何も話しかけないのも違う気がするーー。でも、一体どうしたら?そういうことで、いちいち悩んでいた。絵本でも読んでみるか。そう思っても、0歳児向けの絵本というのは「わんわん」「ビリビリ」など擬音の羅列がほとんど。ドライな自分が「これって意味ある?」と囁いてくる。子も子で、なんだか興味深けにしているような気もするが、「あぶあぶ」と言うばかりで聞いていない気も。育児ってこれでいいの!?私はちゃんと母親をやれているんだろうか。ますます不安になった。
区の助産師訪問で、その悩みを相談したことがあった。「たとえばオムツを変える時に『スッキリしたねー!』と話かけるだけでもいいんです!」と元気よく返される。実践してみても、自分の言葉が宙に浮いたまま、誰にも届かず彷徨っているような感覚。孤独感は、いっそう募った。「早く職場に復帰したい」そんな気持ちは、やっぱり増すばかりだった。
でも、1歳半を過ぎるくらいになると、徐々にコミュニケーションが取れるようになる。「ゴミ、捨ててきてくれる?」という私のお願いに、言葉は話せなくてもゴミ箱までヨタヨタと歩いて行き、ポイっとしてくれた時には育児のフェーズが変わった感覚があった。
そして、2歳。だいぶ文章めいたものも話せるようになってきて、お互いに意思疎通が図れるようになってきた今。以前のように孤独を感じることは、めっきり減った。赤ちゃんのときに読んでいた絵本を読んでほしいというので「じゃあじゃあ」と擬音メインの絵本を読むと、ケタケタと笑う。「おもしろいねー」なんて言ってくる。「だいすき だいすき ギュッギュッギュー」と言って抱きしめてくれた、ある日。心底ドキッとした。それは0歳の頃から、私が子どもに言い続けていた言葉だったから。あの孤独のなかで話しかけていた全部、ちゃんと届いていたんだ。数年越しに答え合わせができた気がした。
このコラムを書き始めた頃は、正直、育児に対しての心配や負担感が大きかった。今。少しずつ、純粋に幸福や愛しさを感じられる瞬間が増えてきて嬉しい。育児をしていることが、キャリアを妨げるといったネガティブな要因ではなく、ポジティブなエネルギーとなるように。抱え過ぎず、甘え過ぎず。いいバランスを見つけ、軽やかに歩んで行きたい。
『ちい告』とは。
広告されない、ちいさなモノゴトマガジン『ちい告』。時が経てば忘れてしまう「クスッ。」や「キュン!」を手のひらサイズにギュギュッとつめこんだフリーペーパーです。(ADKグループから不定期発行。次号も準備中です!)
【共同編集長】片岡良子(CHERRY)・川瀬真由(ADKマーケティング・ソリューションズ)
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イラスト:大塚 文香




