コラム
SNSに特化したバズを生み出す新しい広告のカタチ“FOOH”
2025.07.23
SNSをきっかけに情報が拡散され、生活者の購買行動に影響を与える今、広告にも新しいアプローチが求められています。その中でも注目すべき手法が「FOOH(Fake Out Of Home)」です。これは、現実には存在しない屋外広告をCGなどで表現し、SNSを通じて話題をつくる方法であり、特に若年層を中心に高い反応を得ています。今回は、私が担当した『ウィッチウォッチ』アニメ化施策を例に、FOOHの特性と可能性についてご紹介します。
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福岡 美菜登 ADKクリエイティブ・ワン 第2デジタル&アクティベーション・プロデュース本部 デジタル・ソリューション局 2022年9月、ADKグループ入社。米国ニューヨークでN.Hollywood や Robert Geller にてアシスタント・クリエイティブ・ディレクター従事後NYで独立し、ブランディング会社を経営。D2Cブランドを中心に、ファッションブランドやインテリア企業のブランディング&クリエイティブディレクション、B2B向け米国展示会の業務に携わる。また、自社直営の路面店やカフェを企画・運営。日本国内では東京ガールズコレクション企画・運営に従事。現職では、Socialを主軸としたオン・オフ統合プランニングのデジタルソリューション・アクティベーション領域を担当。 |
「FOOH」が切り拓く、新たな広告表現の地平
FOOH(Fake Out Of Home)は、現実には存在しない屋外広告をCGやVFX技術を用いて映像上で表現し、その映像をSNS上で発信・拡散する広告手法です。物理的な掲出を伴わないため、演出の自由度が高く、非現実的なスケールや意外性のある表現が可能になります。これにより、視聴者に強い印象を残すことができます。
私が携わった『ウィッチウォッチ』アニメ化に伴う話題化施策では、渋谷の街をFOOH化させる映像を制作しました。リアルと錯覚させる映像演出がXやTikTokで話題となり、数多くのリポストやコメントが寄せられました。実際のOOH(109での掲出)との連携やクイズ形式のSNSキャンペーンとも組み合わせることで、ファンのエンゲージメントを高める設計ができました。FOOH単体ではなく、周辺施策と連動させることで、ブランド体験をより立体的に届けることが可能です。
成功の裏側にある工夫と、FOOH実施時のポイント
FOOHは、国内での実施例が少なく、クライアントにとっても未知の領域であるため、提案段階では「面白いけれど、本当にできるのか?」という疑問を持たれることが多く、実現までに苦労することもありました。しかし、今回のプロジェクトが成立した要因の一つは、アニメという“世界観の強いIP”とFOOHの親和性の高さでした。
映像演出では、「広告らしくない自然さ」が重要でした。あえて手ブレを加え、スマホで偶然撮影されたような見せ方を採用することで、リアリティと没入感を高め、拡散の起点となる体験を設計しました。また、原作ファンが違和感を抱かないよう、キャラクターの言動や性格を細かく再確認し、動画内の振る舞いやセリフにも配慮しました。特に、「ニコならこういうことをやりそう」と自然に感じてもらえる表現を追求し、原作の世界観を崩さないクリエイティブ作りにこだわりました。
FOOHはただ“派手な映像”をつくる施策ではなく、SNSでシェアされる価値のある「小さなストーリー」を緻密に作り込む企画設計が求められます。
現実と虚構の境界を曖昧にしながら、視聴者に“驚き”や“物語性”を届けるFOOHは、これからのマーケティング施策において大きな可能性を秘めた手法です。まだ前例が少ないからこそ、自由度が高く、工夫次第でブランドの新たな一面を引き出すことができます。今後も多様な業種・目的に応用できる新たな広告の選択肢として、FOOHを積極的に提案していきたいと考えています。
【本件に関するお問い合わせ】
ADKクリエイティブ・ワン
第2デジタル&アクティベーション・プロデュース本部 デジタル・ソリューション局 福岡
ADKホールディングス
経営企画本部 PR・マーケティンググループ e-mail:mspr@adk.jp