コラム
佐賀県の魅力を発信する新たな試み『ゴジラ対(つい)サガ』
~プロモーション施策の成功秘話~
2025.07.24
2024年11月に70周年を迎えた「ゴジラ」を起用し、数々の広告賞を受賞して注目を集めた、佐賀県のプロモーション施策「ゴジラ対(つい)サガ」。今回のプロジェクトは、「ゴジラ」という世界的なIPを活用し、佐賀県の魅力を発信する斬新な試みが盛り込まれています。施策がどのように企画・実行され、これからの業務にどのように活かせるか話を聞きました。
―今回の施策において、どのような理由で「ゴジラ」のIPを決定したのですか。
金瀬:営業からプロモーションにおけるIPの活用候補を複数提案された中で、これまでの経験を踏まえ、「ゴジラ」がよいのではないかと考えました。
齋藤:ただ、当初は「ゴジラ」を使用して佐賀県のプロモーションを行うことに関して、佐賀県とゴジラに接点がないため、版権元からは起用が難しいと言われている状況だったんですよね。
金瀬:そんな中、佐賀県のプロモーションとしてゴジラをベースにした企画を考えていると、ゴジラの「かたち」が佐賀県と似ていることに気づきました。それをチームのみんなに伝えたところ、今回の企画のハブとして活用することが決定したんだよね。
齋藤:佐賀県とゴジラの「かたち」という新しいフックが生まれ、あらためてそれを版権元に交渉したところ、面白いと話してくださって。IPとしても、とても良い企画を提案できたと思います。
―「かたち観光大使」というフレームの中で、ゴジラを活用した発信など、意識したことはありますか。
船引:遊び心のある企画だから、ポスターやムービー、ウェブサイトで発信した時に、いかに突っ込んでもらえるかみたいな。強引だけど、でも面白いみたいな。そういう反応を引き出すために、いかにわかりやすく振り切ったアウトプットにできるか、というところがポイントでしたね。
金瀬:それでいうと「かたち観光大使」っていうネーミングも、突っ込んでもらえるポイントとして発信できるかもしれないって。
船引:逆に、ステートメントでは、「かたちだけの観光大使と思うなかれ」という発信で活かしています。クライアント含め、この施策に携わる全員がとにかく面白くしたいという気持ちで一緒に作り上げたと思います。
中津畑:進行していく中で、「ゴジラファンにとってこの施策はうれしいことなのか?」って。ファンの気持ちを起点に考えながら制作していく過程がとても記憶に残っています。
齋藤:そうですよね。前提として、その作品に対する愛がなければ、作品側からお断りされることが多いです。愛が足りないのが透けて見える企画だと版権元を説得できません。それについては、今回の施策はチーム全員の「ゴジラ」に対する愛で突破できた施策なんだろうなって思います。
また、タイミングとして去年が「ゴジラ」の生誕70周年で版権元からも面白いことがしたいという声をいただいていたことに、関係各所が賛同してくれこともこの企画が成立した理由の一つだと思います。
船引:ちょうど、『ゴジラ‐1.0』が世界的な映画賞を受賞したことも追い風になったよね。
―進行していくうえで、大変だったことはありますか?また、それをどう乗り越えましたか。
中津畑:「かたち」だけでは佐賀県の何を伝えられるのかという課題があり、観光プロモーションとして成立させるために、さまざまな企画や施策を進めていきました。
齋藤:はい。企画の一つとして下敷きを制作したのですが、県内の公立小学校の授業では、その下敷きを使用し、佐賀県のかたちについて学ぶ機会がもうけられました。子供たちは楽しみながら理解を深めることができたようです。
中津畑:そうでしたよね。その後も次々に県民の方々の声をいただくようになり、県を越えて反響が大きくなっていきましたよね。
船引:そういえば、制作を進めていく中で、「対(つい)」の言葉が消えかけた時もありましたよね。
そこで、「対(つい)」をステートメントやムービーに入れることで表現をわかりやすくし、皆が納得した結果として世の中に出すことができましたよね。
齋藤:映画の作品だと「対(たい)」の表記ですからね。通常は「ゴジラ対(たい)サガ」と書きますが、そもそもの企画が佐賀県のかたちとゴジラのかたちが対(つい)になっているとこから始まっているので、「ゴジラ対(つい)サガ」にしたいとお話しし、ご理解いただきました。
金瀬:IPには監修が必要なので、一緒に進めるのは大変ですが、やはりパワーを持っているという点は大きいですね。特にゴジラは世界レベルのファンを持っていて、その影響力はさすがです。もし、これが日本国内のIPだったら、ここまでのものにはならなかったでしょうし、ワールドクラスのIPだからこそ今回起用できたのだと思います。
齋藤:そうですよね。「ゴジラ」だからこそ成立した施策だと思いますね。
―このプロジェクトから得た業務上の学びや気づきはありましたか。
齋藤:想定していたよりも新たな施策が次々と増え、最初から最後までさまざまな業務に携われたことや、一つの目標に向かって、これまで接点のなかったスタッフと一緒に仕事ができたことも価値のある経験でした。また、IPではアワードの受賞が難しいと言われている中で、最初から広告賞を狙って取り組んだことは新鮮で、結果として多くのタイトルを獲得できたことが、とても嬉しいです。
金瀬:企画するにあたり、「シンプル」であればあるほど、強いんだなと。子供から大人までにわかるもので、皆さんが喜んでくれるもの。最近はターゲットを狙ったコミュニケーションが多いと思いますが、やっぱり幅広く、面白くて普通に喜んでくれることを考えて、形にして広げていけると、広告として、ひいてはコミュニケーションとして成功するんじゃないかなと思いましたね。
船引:収穫として、金瀬さんの知見と自分のクリエイティブな視点を組み合わせながら、広告媒体をほぼ使わずにメディアやSNSを通じて拡散し、プロジェクトを成功させた経験が楽しかったです。このような仕事を今後も続けたいと思いました。今回のように、プロモーションにおいてコミュニケーションディレクターとクリエイティブチームが協力することで、面白いものが生まれると感じています。今後は、若手のコミュニケーションディレクターがクリエイティブと積極的に関わっていくことが重要だと思います。
<ご参考> ゴジラ対(つい)サガ プロモーション施策 実績
〇広告換算額(2024/10/30~2025/3/25) 1,152,744,573円
〇佐賀県庁展望ホール来場者数(11/1~1/26) 25,759名
〇岩屋川内ダム 来場者数(2024/11/22~2025/1/26) 21,696人 ※昨年比400倍
〇SNS(X)リーチ(2024/10/27~2025/3/25) 49,206,296
今後もADKグループは、事業ビジョンに「ファングロースパートナー」を掲げ、ファンを生み出し、ファンとの絆を深め、ファンと共に新しい価値を生み出すことで、クライアントビジネスの持続的な成長や日本で生まれたIPのグローバルにおける更なる発展に貢献し続けることを目指します。
プロフィール
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金瀬 侑也 ADKクリエイティブ・ワン 第2デジタル&アクティベーション・プロデュース本部エリアソリューション局 コミュニケーションディレクター 大阪のWEB制作会社で2年間WEBデザイナー経験後、1年の海外留学を経て東京のプロモーション制作会社で5年間プロデューサーを経験。その後、2019年ADK入社。企画段階から制作までワンストップでデジタル、リアル、映像、PRまで幅広く対応可能。 |
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船引 悠平 ADKマーケティング・ソリューションズ エクスペリエンス・クリエイティブ本部 第3エクスペリエンス・クリエイティブ局 コピーライター/プランナー 美術大学を卒業後、アートディレクターからコピーライターに転身し、2017年ADK入社。TVCM、WEBムービー、グラフィック、ラジオCMといったクリエイティブ領域を軸に、メディアやSNSを活用したプロモーションの企画・制作にも積極的に取り組んでいる。 |
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齋藤 ちひろ ADKエモーションズ コンテンツ事業本部 IP事業局 第1戦略グループ IPプロデューサー アメリカの大学を卒業後、2009年ADK入社。アニメ作品の海外ライセンスの業務に長年携わり、2020年より国内向けのIPコンテンツを活用した業務に従事。さまざまなIPを活用した販促施策を含む領域を幅広く担当し、企業タイアップでは、アニメやキャラクターのコンテンツの特性を理解し、「作品らしさ」と「ブランド訴求」を両立させる提案を心がけている。 |
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中津畑 貴之 ADKマーケティング・ソリューションズ 国内ネットワーク本部 中部支社 第一営業局 シニア・ビジネスプロデューサー 出版社でのキャリアを経て、2015年ADK入社。企画立案を担ったチームとともに、観光振興と地域共感につながるプロジェクトとして成立させる推進役として関与。“ファン起点”での構想づくりと、IPを起用するうえで欠かせない「作品への愛」をチームで共有することに尽力。 |
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株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
国内ネットワーク本部 中部支社 坂野/中津畑
株式会社ADKホールディングス
経営企画本部 PR・マーケティンググループ 大沢/根岸 e-mail:mspr@adk.jp