コラム
【調査から読み解く】次世代の共感は「社会の公平性」に。ポストSDGs時代に求められる、生活者視点のコミュニケーション設計とは。
2026.02.12
2015年のSDGs採択から10年。2030年の目標年を前に、世界では「ポストSDGs」や、ウェルビーイングを重視する「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」といった次なる概念の議論が始まっています。 ADKマーケティング・ソリューションズが実施した「ADK生活者総合調査2025」では、SDGsが「定着期」にある一方で、生活者が企業の広告に感じる「ズレ」や、若年層特有の「社会の公平性」への高い関心が浮き彫りになりました。
これからの社会を担う「SDGsネイティブ」に選ばれる企業であるために、いま求められるコミュニケーションと組織の在り方とは。調査を担当した中野忠夫と、サステナビリティ領域の専門家である有泉昌が、最新データから読み解きます。
「ADK生活者総合調査2025」より 『SDGsに関する意識結果』を発表|SDGsへの「関心・利用意向」と「行動」には、17.4ポイントのギャップが存在(プレスリリース 2025.11.19)
(左) 中野 忠夫 ADKマーケティング・ソリューションズ マーケティングインテリジェンス本部 プランニング・ディレクター
(右) 有泉 昌 ADKマーケティング・ソリューションズ BXデザイン本部 ビジネスイノベーション局 サステナビリティソリューション担当 チーフ・エクスペリエンスデザイナー/クリエイティブ・ディレクター
ポストSDGsを見据えた世界の潮流と、日本の現在地
Q. SDGs採択から10年が経過しましたが、世界と日本、それぞれの現状をどう見ていますか?
有泉:世界的には、COVID-19や国際紛争など様々な要因で目標達成が危ぶまれる中、国連では2027年から「ポストSDGs」の議論が本格化しようとしています。アメリカにおけるバックラッシュ(揺り戻し)の動きもありますが、ウェルビーイングを重視する「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」への注目など、依然としてサステナビリティへの議論は活発です。
一方で日本に目を向けると、企業の取組みは依然として投資家目線の文脈だけで語られることが多い状況で、生活者目線の価値提供という点では世界に遅れをとっているのが実情です。しかし、2027年3月期からは国際基準に整合するサステナビリティ開示の義務化も東証プライム上場企業に順次始まりますが、今後は開示対応にとどまらず、サステナビリティを経営や事業と真に一体化させ、「生活者目線の価値提供」へと加速させることが期待されています。

「選ばれない」リスク。SDGsネイティブが重視する「自分ゴト化」
Q.最新の『SDGsに関する意識結果』ではSDGsの認知率が80%を超えていますが、若年層の意識にはどのような特徴がありますか?
中野:SDGsの認知率は20年から22年にかけて急上昇。22年以降は80%以上の高水準を維持しています。認知率は全年代で高水準ですが、特に注目すべきは就職意向です。「SDGsに積極的な企業で働きたい」と回答した割合は、10代が飛び抜けて高く、52%と半数を超えています。
有泉:2020年頃から学校や日常生活で当たり前にサステナビリティに触れてきた若年層は、「自然に社会課題への関心を持った層」、いわば「SDGsネイティブ」と言われるような人たちです。そんなSDGsネイティブにとって、投資家向けのIR文脈だけで語られる活動は「自分ゴト」になりづらく、共感を得ることはできません。今後社会に進出する彼らに適切にアピールできなければ、人材確保において不利になる「選ばれない企業」になってしまうでしょう。


Q. 若年層の共感を得るために、具体的にどのような情報発信が求められていますか?
中野: 調査では「SDGsについて、わかりやすく広告をしている」と感じていない人が約7割(66.1%)に達しており、現在の訴求内容が、必ずしも生活者のニーズとマッチしていない現状も伺えます。

昨年、大学生にインタビューを行った際、魅力的に映る企業広告のポイントとして共通のキーワードが見えてきました。それは企業視点の事業内容や、企業の取組みの説明ではなく、その取組みが自分達にどう影響しているのか?どんな価値を提供してくれているのか?の方が大事だということでした。
【大学生を中心に、魅力のある企業広告(TVCMなど動画について)のポイント】
● 企業視点での事業説明ではなく、生活者への提供価値訴求
● 企業の情熱、地道に挑戦する姿など企業の実直な姿の訴求
● 働く人を大切にしている姿勢について伝わる訴求
サステナビリティに関する訴求も、企業側の取組みについて訴求するステージから、それらがどう生活者に新しい価値を提供しているのか?その取組みの結果、何に貢献ができたのか?より身近で自分ゴト化されることが重要となってきているのかもしれません。

有泉: 中野さんのおっしゃる通り、情報開示のための数値を算定して公開するだけのステージは過ぎています。企業側の取組みを一方的に説明するのではなく、その活動を通じてどのような価値を生活者に提供し、社会に貢献しようとしているのか。その企業ならではの「サステナビリティストーリー」を丁寧に紐解いて構築することが、若者たちの「自分ゴト化」を促す鍵となります。
中野:また、SDGsの17の目標について共感度を調査したところ、10代においては、7つの項目で共感度が高いという傾向が見られました。特に10代の共感度が高いのは、「貧困をなくそう」「人や国の不平等をなくそう」「飢餓をゼロに」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」といった、社会における不平等の解消に関する目標です 。これは、他の年代に比べ、10代が、自分たちが日々暮らす社会での「公平性」に対して、意識・関心が高いとも言える結果です。

ブランドと組織を同時に変革する「SXデザイン」の視点
Q. 具体的なアクションとして、どのようなソリューションが有効でしょうか。
有泉:ADKでのサステナビリティ領域のソリューションの考え方としては、「サステナビリティ・トランスフォーメーション・デザイン」という大きなフレームのもと、主に「ビジネスモデル」「組織環境」「ブランディング&コミュニケーション」といった3つの領域における変革を推進・伴走しています。
その一環である「DE&I ソーシャルアクション デザイニング」は、今回の調査でも関心の高かった、社会における「公平性」といったテーマに直結するソリューションです。
「DE&I ソーシャルアクション デザイニング」は、NPOやソーシャルベンチャーなど社会課題解決の専門家と共創し、社員自身も参加できる「その企業ならではのソーシャルアクション」を設計します。企業との価値観の一致を重視する若年層にとって、こうした「社会と一緒に新たな価値を作るサステナビリティ体験の提供」こそが、企業への愛着や一体感を高め、エンゲージメント向上に繋がると考えています。

DE&I領域における共創アクションプランの開発支援サービス「DE&I ソーシャルアクション デザイニング」を提供開始(プレスリリース2025.3.6)
ADK MSは、データに基づくインサイトと、心を動かすクリエイティビティの両輪で、皆様が描くサステナブルな未来への挑戦に伴走し続けます。
<プロフィール>
有泉 昌
ADKマーケティング・ソリューションズ BXデザイン本部 ビジネスイノベーション局
サステナビリティソリューション担当
チーフ・エクスペリエンスデザイナー/クリエイティブ・ディレクター
外資系企業のビジネスプロデュース部署を経て、統合型クリエイティブプランニング部署にて領域や手法に捉われないニュートラルな視点でのクリエイティブ開発とコミュニケーション設計に従事。現在はコンサルティングからクリエイティブ開発まで、クライアントのサステナビリティ領域における業務推進を支援。クライアントのCSV経営への取組みや企業価値の向上に貢献しながら、同時に社会課題を解決することを目指している。
■BXデザイン本部 ビジネスイノベーション局
2026年1月設立。広告/コミュニケーション領域で研鑽してきたケイパビリティを活かし、上位概念となる経営課題を解決することに特化した新組織。
公式サイト:https://www.adk-bi.jp/
中野 忠夫
ADKマーケティング・ソリューションズ マーケティングインテリジェンス本部 プランニング・ディレクター
大手鉄道会社に入社後、ハウスエージェンシーにてマーケティング業務を担当。その後、大手総合広告会社に入社。
ストラテジック・プラナーとして、携帯キャリア、トイレタリーブランドなどの業務に従事し、2007年ADKに入社。企業ブランディング業務、リクルーティング支援、SDGs関連業務などに多くの実績をもつ。アジア、北米、南米、欧州、アフリカ等グローバル業務経験も多い。
【本件に関する問合せ先】
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
経営企画本部 PR・マーケティンググループ 内山 e-mail:mspr@adk.jp




