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【フロントラインレポート】MaaS社会実装に向けた自治体との取り組み。移動データを活用し密にならない集客を目指して実施した実証実験の結果が公表されました!

大山 晋
ADKマーケティング・ソリューションズ
マーケティングインテリジェンスセンター第3プランニングユニット第4グループ グループ長

自治体や商業施設から、コロナ禍で密にならずに集客したいという要望が寄せられるなか、このような社会課題の解決のためにMaaSが有効な手段と捉え、ADKマーケティング・ソリューションズ(ADK MS)は、大阪商工会議所などとともに、幅広い異業種と連携した取り組みを行ってきました。今回、大阪市内の商業施設で、アプリを活用して密を避け集客する実証実験を2回(1回目:20211112日~125日、2回目:20211217日~2022131日)にわたり実施しました。実証実験を行うことになった経緯や具体的な取り組み、この度公表された実証実験の結果などについて、ADK MSマーケティングインテリジェンスセンター大山 晋に話を聞きました。

―はじめに、実証実験の経緯についてお聞かせください。

大山: 大阪商工会議所が2025年の大阪・関西万博にむけて大阪でのMaaSMobility as a Service)の普及にむけた企業連携を促進するフォーラムを主催しており、僕はそこで移動データを活用したマーケティングの可能性についての勉強会を主催していました。当時、大阪では万博がリアル会場だけでなくバーチャル会場とあわせた新しい体験提供をすることがきまっており、オンラインとオフラインの融合した取り組みに各企業が高い関心をもっていました。
さらにコロナウイルス感染症の拡大によって都市部のリアル店舗の売上が急速にECにシフトしている危機感が広がりました。そこで、鉄道会社やそれに付随する商業施設に、移動データを活用して密にならない集客というテーマを提案したところ、その実験に多くの賛同がえられたのが背景です。

―移動データを活用したマーケティングの可能性についての勉強会が始まりだったのですね。第1回と第2回の実証実験ではどのような検証課題があったのですか?

大山: 第1回の実験は、HEPFIVEという大阪ではおなじみの大型アパレル商業施設のみで実施したのですが、この実験では、SNSインフルエンサーを活用した集客効果が検証課題でした。ECに流れがちな消費をリアルに戻すために、多くのフォロワーを集めているアパレル店員の協力を得て、彼女たちがどれだけECに流れる顧客を自分のリアル店舗での来店を促すことができるのか、を検証課題としました。また第2回では経済産業省の委託金を得て、特に混雑の緩和をどのように行うのか、が検証課題となりました。具体的に混雑する時間を避けることでインセンティブを提供するオフピーク行動の実験や、行動範囲を広げるため鉄道チケットや電動キックボードの無料チケット等との連動を行いました。

第2回実証実験の流れ

―幅広い異業種が連携したこの取り組みに、広告会社としてADK MSはどのような役割を?

大山: 実証実験を共同でおこなった経産省の方や、コンサルティングファームの方々からは、広告会社が入ることで、技術的な実験に留まることが多かったMaaSの取り組みを、消費者が楽しく参加できるキャンペーンとして仕立てることができたとの評価をいただいています。
特に実証実験のスキームを設計してKPIなどを設定するという能力だけでなく、各商業施設がもつビジネス上の課題や現場のオペレーション等の理解度も高いことで、幅広いステークホルダーのそれぞれに対して、具体的な提案や協力の打診を行うことができました。このため、実証実験の実施団体として経産省との窓口の事業者として、実験の企画から運営、検証までをリードする役割を担ってきたと思います。

 ―実証実験の検証結果から得られた消費者の行動把握や見えてきた課題はありますか?

大山: 今回の実証実験では、参加者から詳細な行動データを取得するという目標は達成し、実験の参加者がどのような時間に大阪の梅田地区のどのお店にどんな順番で行動したかまで詳細にデータを取得しました。それが従来の梅田での外出者と異なり、このピークタイムを避けるよびかけに賛同を得たことがわかり、オフピーク行動を誘引する実証実験としては一定の成果が得られたと思っています。
ただ、実証実験の結果として大規模な集客効果が得られたのか、という点ではまだ課題が多いと思います。実証実験の最中にオミクロン株の急拡大があり外出を呼びかけにくい状況となったことや、実験アプリをダウンロードさせるための十分なインセンティブや告知ができなかった点は課題です。

■検証命題①時間的分散:大都市におけるターミナル駅周辺の来訪時間のピークシフトを促す新たな集客方法の実現と閑散時間への誘引により、コロナで低下した集客の回復の可能性を検証した結果、一定の行動変容がみられた。
(出典:産総研 地域新MaaS創出推進事業での取組)

―新たな実証実験やMaaSの社会実装に向けた動きなど、今後に向けて。

大山: 2022年度も新たな実証実験を大阪商工会議所でのMaaSフォーラムの参加企業と共に計画中です。特にMaaSの普及は、自家用車中心の街づくりから歩行者やライドシェア等中心とした新しい移動滞在空間が作られるといわれています。特に「ウォーカブルシティ:自動車から歩行者中心の街へ」というコンセプトで大阪では様々な実験が始まっており、これらと連携しながら、シェアサイクルや電動キックボードといった新しいモビリティに誘引しながら、「新しいまち歩き」のスタイルの提案を行う実験を構想しています。

 ―最後に、これまでの活動やこの取り組みへの想いをお聞かせください。

大山: 僕は、従来型のストラテジックプランニング職の経験を長くしてきました。その間、印象的な広告やブランドを世に送り出す機会にも恵まれましたが、広告だけでなく社会全体がデータ駆動型に移行していくに伴って、自分のキャリアもシフトさせなければならないという危機感を感じました。マス広告で人の心を動かすこともあるでしょうが、テレビ視聴者の高齢化にともなってマス広告がマーケティングの主人公でなくなっていくなか、社会的なインパクトを与えることができる分野は、データ・テクノロジーであると考えています。
ただGAFAや競合デジタル広告会社のようなオンラインだけの世界で世の中を変えるのではなく、僕らが従来得意としていたリアル店舗の融合した社会変化が起こせないかと考えました。
この実証実験でアプリの開発をおこなったり、アパレルECで数万人のフォロワーをもつショップ店員インスタグラマーを起用したのも、ソーシャル時代の新しいインフルエンサーの影響力をリアル店舗の活性化につなげたら面白いのではと考えたからです。
今、「ウォーカブルシティ」という取り組みをしているのも、ARやデータ・テクノロジーで実際の街歩きがおもしろくなるかもしれないと考えているからです。やはり広告業界の人間なので、街や人がおもしろくなる「コト」を起こすことを追求し、ADKのパーパス“すべての人に「歓びの体験」を”実現していきたいと思っています。


大山 晋
ADKマーケティング・ソリューションズ
マーケティングインテリジェンスセンター
第3プランニングユニット第4グループ グループ長


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