コラム

広告会社からの変革

ADKが目指す第三極とは何か。イノベーションリード担当執行役員・三橋と考える

左から) BI局 局長 山口 大道/執行役員 三橋 良平 

ビジネスイノベーション(BI)局 局長の山口が、社内外のキーパーソンとの対話を通じて、これからの時代に求められる“ビジネスイノベーション”を多面的に解き明かしていく本連載。
今回は、1990年代のデジタル黎明期からデジタル分野に身を置く執行役員である三橋に、広告業界が大きな転換期を迎える中、新しい広告会社の価値とは何かを問います。

キャリアの原点である広告会社からエレクトロニクスメーカーへの出向時代、CRMという言葉すらなかった時代に立ち上げたデータ活用事業、そして「仕組みを作ることが好きだった」と語るBXD本部 執行役員 三橋 良平氏(以下「三橋」)のクリエイティビティの源泉に、BI局 局長 山口 大道氏(以下「山口」)が迫ります。


「人の心を動かしたい」原点と、出向時代に叩き込まれた「0→1」思考

山口:三橋さんは、なぜ広告業界に入ったのですか? 僕らの学生時代の頃は、キムタク(木村拓哉)さん全盛期でドラマでは『ラブジェネレーション』などが広告業界をテーマにして流行っていましたよね!そしてまだまだ広告も人気だったと思うのですが。

三橋:もう20年以上も前のことで細かいきっかけは忘れました(笑)でも、理由はとてもシンプルでした。今の新入社員の皆さんがと同じように、広告を通じて人の心を動かしたい──その思いが出発点でした。

山口: なるほど、ではCMを作りたいというようなマインドがあったのですか?

三橋: ありましたよ。もともとクリエイティブ志望で、コピーライター養成講座にも通っていました。実は父も広告の仕事をしていて、その影響も大きかったと思います。

山口: それは意外です!

三橋:父からは「航空機の機内モニターに、日本で最初にCMを出稿したのは自分なんだ」と聞かされていて、「そんな0→1をやってきた世代なんだな」と感じていました。

山口: それはすごいですね、まさに、サラブレッドの血ですね 。僕の父は公務員だったので、そこまでドラマティックな展開はないです笑 私の知る限り、三橋さんは広告業界に入社されてからは、かなり変わったキャリアのスタートだと記憶しておりますがいかがでしょうか?

三橋: 広告会社に入社してわずか半年で、クライアントのエレクトロニクスメーカーに出向することになりました。配属先は、新規事業の立ち上げを担う「コーポレート戦略室」です。そこでは、商品の箱に同梱されていた「お客様カード」と呼ばれるハガキで取得したお客様情報を活用し、今で言うCRMにあたる仕組みをゼロから立ち上げました。

山口: CRM 90年代後半ですよね 。僕が2002年に入社した時ですら、CRMなんて言葉は周りの誰も使っていませんでした。

三橋: もともとそのカードは、修理対応のためだけに使われていたものです。ただ、「こんなにお客様の情報が集まっているのに、修理だけに使うのはもったいないよね」という議論が生まれてきました。事業部ごとにバラバラに管理されていたカード情報を横串で統合できれば、お客様との関係を深めてファンをつくる資産になる──そんな発想からプロジェクトが動き出しました。

山口: そのような思想が当時からあったのがすごいですね。

三橋: その延長で、ブロードバンドが出始めたタイミングで動画ポータルサイトも立ち上げました。企業のCM動画を集めて配信し、その間に別のCMを差し込む──今で言うYouTubeに近いモデルです。視聴データや登録情報をもとに、ユーザーごとにクリエイティブや出稿内容を変える「パーソナライズド・アド」に近いことをやろうとしていました。

山口: それは、早すぎましたね(笑)

三橋: そうなんです。時代を先取りしすぎていて(笑)、ビジネスとしては伸ばし切れなかったところもあります。

山口:でも、決まったプロダクトを売るのではなくて、構想して「仕組みを作る」っていうのを、若い時に経験されているのが、今の三橋さんの原点なんだなって感じるエピソードだと思いました。

三橋:当時は今よりも「まずやってみよう」とチャレンジを許容してくれる空気も強かった。自分の力だけでなく、そうした環境にもずいぶん助けられたと思っています。

「第三極」の解像度。広告会社のDNA古い仕組みをハックすること

山口: 昨年ADKマーケティング・ソリューションズ(以下ADK MS)に入社して「第三極を作る」と掲げられていますが、この転換期に三橋さんが考える「新しい広告会社の価値」とは何なのか、改めて教えてください。

三橋: はい。最近になって、「第三極」と自分が呼んでいるものの輪郭がだいぶクリアになってきました。

山口:それは、どのようなところで、そう感じてらっしゃるのでしょうか?

三橋:広告会社のDNAって何か、と改めて考えると、「まだ世の中にないものを形にしてみよう」「新しい意味や文脈をつくろう」というマインドそのものだと思うんです。

山口: 確かに、そう言えますね。「こんな発想なかったよね」というアイデアで世の中を変えていくみたいなことですよね 。

三橋:これまでは、そのアウトプットの多くがCMという“広告枠だったわけですが、今は出口の選択肢が一気に広がっています。古い制度や規制、既存の業界ルールといったレガシーな枠組みを、別の視点で「ハック」して新しい価値に変えていく。そういうアプローチも、広告会社が本来持っている発想力の延長線上にあると思っています。

山口: なるほど。

三橋:経営の領域でも同じです。たとえば財務諸表ひとつとっても、「このデータの読み解き方がユニークだよね」と言われるような視点やストーリーを提示できる。よく「広告会社とコンサル会社の距離が近づいている」と言われますが、コンサルは論点を分解して積み上げていく思考が強み。一方で広告会社の強みは、発想力と、それを実装しきる推進力だと考えています。そうした「頭の使い方」ができる人材が集まっていること自体が価値であり、その思考様式を武器に変えていくことで、広告会社は新しい勝ち筋をつくれるはずだと感じています。それを体現する存在が、僕の考える「第三極」に近いイメージです。

山口: まさに「価値の再定義」ですね 。それはクライアントに対してだけでなく、「自分たちの価値の再定義」でもありますね。

広告会社の価値を再定義する組織へ

山口:「新しい価値」を実現するために、今、会社全体として足りてないものって何だと思いますか?

三橋: 足りていない点は、大きく2つあると感じています。1つ目は、とてもシンプルですが「クライアントのところに足を運ぶ人が減っているのではないか」ということです。

山口:それは、どういったところからそう思われているのでしょうか?、例えば、コロナの影響も起因しているとお考えでしょうか 。

三橋:コロナの影響ももちろんあります。結果として、テクノロジーの進展もあり、直接対峙することなく、コミュニケーションが完結することが多くなった。効率性は高まったものの、その反動でクライアントに行かなくても業務が進んでいくことが多々あるようになりました。しかしながら、相手の本音を引き出すのは、対面でないとなかなか難しい。オンラインだと、ちょっとした間やうなずき方、場の空気感が読み取りづらいんですよね。本来、そうした微妙なニュアンスを感じ取りながら対話することは、コミュニケーションのプロである広告会社が得意としてきたはずの部分です。

山口:確かに、オンラインは本当に働き方を変えたと思います。ただ仰るように、リアルのコミュニケーションの価値を改めて感じているのもとても同意します。ちなみにもう1つはなんでしょうか?

三橋:2つ目は、「自分の好きなこと、やりたいことがあるのに、それをはっきり言葉にして表に出す人が少ないのではないか」という点です。与えられたタスクをきちんとこなすことが「仕事のすべて」だと思い込んでしまい、自分で可能性の範囲を狭めてしまっている人が多いように感じます。

山口:わかります。

三橋:以前、全社ミーティングで若手社員が「自分たちでメディアを持ちたい」と手を挙げてくれたことがありました。ああいう「これをやってみたい」という率直な声は、もっとあっていい。僕らマネジメントは、その声をきちんと受け止めて後押しする存在でなければいけません。この「クライアントのもとに行くこと」と「やりたいことを声に出すこと」が、今は以前に比べてかなり減っている印象です。

山口: 僕もこの新しい局を「失敗を恐れずに挑戦できる場所」にしていきたいです。「チャレンジしないことの方がダサい」というような環境にしていきたいと思っています。

三橋: 新しいことは、誰も正解を知らないのが前提です。だから、うまくいかないことがあって当たり前。そのうえで、「どうやって失敗の確率を下げてあげるか」を一緒に考え、伴走することが、マネジメントの役割だと考えています。

「広告」の意味も再定義していく

山口: 本日は「イノベーション」がテーマですが、三橋さんにとってのイノベーションの定義って何ですか?

三橋:うーん、これは一言でなかなか難しいですね(笑)。

山口:ちなみに僕は、「不可逆性をつくること」だと定義しています。不可逆性とは、一言でいうと、「元に戻せない状態になること」ですが、例えば“恵方巻き”。
僕らの若い頃ってそんな文化なかったじゃないですか。これは、まさに恵方巻という文化が定着したことにより「不可逆性」でもたらされたイノベーションであると捉えています。

三橋:なるほど、面白い視点ですね。僕の感覚では、イノベーションは「変革」にかなり近い言葉です。新しい風習づくりも含めて、企業や生活者、社会の中にある「不」という言葉。─不満、不安、不便といったものが解消されて、これまでになかった利便性や驚き、楽しさが更新されていくこと。その一連の変化を幅広くイノベーションと呼んでいいのではないかと思っています。

山口:三橋さんの考え方のように、僕は「広告」っていう言葉自体もアップデートしたいと思っています。クライアントが想像する広告会社のイメージを払拭することが、僕自身の面白さでもあるんですよね

三橋:僕自身は、もう「広告」という言葉にあまり縛られていません。クライアントや社会から見たときに、当社がどういう種類の会社なのかを説明するうえでいちばんわかりやすい“ラベル”として使っている、という感覚に近いですね。

「課題解決」と「機会創出」が交わる点を

山口:クライアント/経営者も、いまだに「打ち手が欲しい」って言う人が多い印象です。ただ、打ち手から入っても成功確率は低いように思います

三橋:そう、課題の根っこを突き止めに行かないと。

山口:ですよね。だから僕は最近、「課題をデザインする」だけじゃなくて、それにプラスして「機会を創出する」ことを掛け算しなきゃいけないって思っています 。

三橋:「機会を創出する」というのは、具体的にどういうイメージでしょうか?

山口:例えば、プロジェクトを通じて「社員の成長」っていう機会を作る。あるいは「新しい市場に参画することによって得られる価値」とか 。そういう「課題解決と機会創出が交わる時」に企業は成長していくと話をすると、響く経営者が多い印象です。

三橋: なるほど、とても共感します。それは、僕がこのチームに期待していることともかなり近いです。

山口: もう少し、詳しく教えてください。

三橋:僕がやりたいことを一言で言うと、「一人ひとりが持っているポテンシャルをどうやって最大限引き出すか」に尽きます。そのエネルギーがきちんと噛み合ったときに、初めて本当の意味でのイノベーションが起きるのだと思います。

山口:ポテンシャルを引き出すということでしょうか。

三橋:強い思いを最初から持っている人もいれば、プロジェクトに巻き込まれることでだんだんと当事者意識や熱量が生まれてくる人もいますよね。その両方をうまく集めて、チームとしての力に変えていく。そのプロセスそのものが、僕らマネジメントがつくるべき「機会」なのだと考えています。

山口:三橋さんのキャリアの原点(0→1の経験)から今のお話まで伺い、すべてが地続きなのだなとあらためて思いました。そのプロセスをしっかり共有して、チーム皆で戦えるセクションにしていきたいですね。


【プロフィール】

●執行役員 三橋 良平

長くデジタルビジネスに従事。媒体開発、ダイレクトマーケティング、サイト構築やコミュニケーションプランニングと実行、UI/UX設計、自社EC、マーケットプレースの事業戦略立案、グロース、構築・運用、組織作りをIT業界から食品、化粧品、自動車まで幅広い業界の経験等、幅広く業務を経験。EC事業会社立上げ、経営や事業運営、マーケティング全般、システム周りを担当し、3年半で黒字化EC部門立上げ、クライアントのEC事業計画やブランディング、オムニチャネル推進、サービス及び事業開発などデジタルマーケティングのプランニング、実施、伴走支援。北京にも部署を持ち、中国企業のDXやOMO推進、日系企業の中国進出を支援。

●ビジネスイノベーション局 局長 山口大道

新卒から一貫して広告会社にて従事。営業、ストラテジックプランニング、データマーケティング、プロモーションと幅広く研鑽してきた。その強みや経験を活かし、統合プランニングに強みを持った人材として活路を見出した。2017年より、成長戦略デザイン/事業開発領域にシフトし、事業会社における新規事業開発/DX支援を中心に提供している。

 

 


【本件に関する問合せ先】

株式会社 ADKマーケティング・ソリューションズ
 BXデザイン本部 ビジネスイノベーション局 山口(大)/児玉/川西  info@adk-bi.jp
株式会社 ADKホールディングス
 経営企画本部  PR・マーケティンググループ 根岸/大沢 e-mail:mspr@adk.jp

ADK Marketing Solutions Inc.