コラム

ブランドのヒットを生み出す、唯一無二のオリジナルIPをつくる。

EXクリエイティブ本部 大垣 友紀惠

昨今、企業の広告・マーケティング活動において、キャラクター等の知的財産(IP:Intellectual Property)に注目が集まっています。
そのなかには、企業のオリジナルIPを開発し、マーケティング活動や企業活動そのもののブランディングに起用するケースが多く存在します。他にはない魅力的なIPコンテンツを作りブランドを成長させることは、競争力を高める鍵となります。

今回は、仕事とプライベートの作家活動両方で活躍しているADKマーケティング・ソリューションズの大垣友紀惠に、IPビジネスにおいてキャラクターをゼロから生み出すプロセスや自身が携わったヒット事例を通じて、オリジナルIPの魅力を探っていきます。

大垣 友紀惠  
ADKマーケティング・ソリューションズ   
EXクリエイティブ本部 
アートディレクター&クリエイティブディレクター

作家、アーティストとしても活躍し、千葉大学でコミュニケーションデザインの非常勤講師も務めている。ゼロから新しいIPを生み出すことを得意とし、いくつもの“ヒット”を創出している。1993年、ANAの機体デザインコンテストで優勝し、クジラの飛行機「マリンジャンボ」が全国で大ヒット。2015年、Campaign Asia Pacific による、アジアの注目のクリエイター『40才以下の40人』に選出。2022年出版の「お魚イラストレシピ大百科」がベストセラーとなり、世界最高峰のデザイン賞といわれる「D&AD 2023」にてWood Pencilを受賞。企業のブランディング、広告、デザイン、アートディレクション、デザインコンサルティングを得意とする。

―ゼロからIPを生み出す際の最初のステップについて教えてください。

「型にはまらない魅力をつくる」ことです。私は、他にはない「唯一無二のオリジナリティ」を生み出せるかどうかが全てだと思っています。
さらに、商品やIPに、作り手の本気度や愛情が溢れていることが重要だと思います。人が本気で情熱を注いで作ったもの、本気で面白いと思って作っているものというのは、他の人も知りたい、魅力的な価値だからです。
この2つが、商品やブランドをヒットへと導く大切な要素だと思います。

―では、唯一無二のデザインを生み出すにはどのようなプロセスで進めるのですか。

「唯一無二」のデザインを生み出すためには、私はアート思考と右脳の活用が重要だと思っています。
予定調和を避けるために、「そうきたか!」と驚かせるような、意外性のあるクリエイティブな発想を大切にしています。特に、矛盾したキーワードや課題がある場合、左脳を使って論理的に解決することは難しいですが、アート思考と右脳で解決しながらイノベーション感やユニークネスを高めていきます。

―オリジナルIPの魅力とは何でしょうか

そのキャラクターが企業の代弁者として機能し、硬い情報も、シンプルにわかりやすく伝えられるため、ブランドのファンをもっと増やすことができたり、ブランドがさらに認知されてヒットにつなげることができます。また、バラバラだったものがつながって大きなブランド価値が見えてくるようになり、ブランドのユニークさが引き立つという価値を提供できる点です。
加えて、純粋に、エンターテイメントとしても、楽しい、面白い、癒される、親しみやすいなどの付加価値が、ブランドの認知度や好意度、愛着度を高めることを加速します。

―最近の担当事例で、特に印象に残っているものを教えてください。

ヤッホーブルーイングさんのクラフトビール、『眠れるししし』と『有頂天エイリアンズ』のデザインを手がけました。
ヤッホーブルーイングさんは「ビールに味を!人生に幸せを!」というミッションのもと、唯一無二のクラフトビールの商品で、人々を魅了しています。味づくりから醸造に至るまで、こだわりと愛に満ちています。
ヤッホーブルーイングさんの「100人に1人に深く刺さればよい」というコンセプトに、私も非常に共感、意気投合してプロジェクトを進めていきました。情報や物にあふれたデジタル時代において、万人受けを狙うと、特徴のない、記憶に何も残らないものが生まれてしまうことも多いと感じています。一方、特定の人々の心に深く鋭く刺さるものは、多くの人に魅力を伝えることができ、結果的に、幅広い層に支持されると思います。
実際に、セブン‐イレブンさんでの販売数がNo.1となったことは、その証明と言えるのではないでしょうか。
※プレミアムビールカテゴリーにおいて


―IPを作るうえで、ファンとの絆を深めるために特に意識していることは何ですか?

最先端の技術を取り入れることと、新旧に関係なく人の心に響く温かい要素を融合させることが大切だと思っています。
ヤッホーブルーイングさんと、IP開発や世界観を作り上げることを得意とする社内のプロデュースブティックnestと組んで、例えば、AIエージェントを開発してSNSを活用する一方で、アナログの着ぐるみを制作したり、誰もが笑顔になれるようなグッズを開発しています。老若男女問わず、記憶や印象に残る企画やデザインを提供できるよう心掛けています。
IP開発においては、特徴的で広がりのある世界観を設定することが重要です。声や話し方、語尾、さらには手触りや香りなど、視覚だけでなく五感に訴えかける印象を考えます。それにより、ファンとの絆を深め、より親しみやすい存在として愛されるキャラクターを生み出すことができると思っています。そして商品を提供するだけでなく、ファンとのコミュニケーションを大切に共感し共感を生むことが、結果として、ブランドへの愛着や支持を生む原動力になると思っています。

―ADKグループの「ファングロースパートナー」というビジョンは、具体的にどのようにIPの創造に影響していますか?

ブランドの価値を高め、ブランドのファンをどんどん増やしていくということは、IPの創造においても、重要なビジョンだと思います。
2008年にJAグループさんの「みんなのよい食プロジェクト」を立ち上げた際に、オリジナルキャラクターの「笑味(えみ)ちゃん」をデザインしました。笑味ちゃんは、日本の農家の方々が愛情を込めて作ってくださる農畜産物を、みんなで美味しく食べることを伝えるキャラクターです。今では50ポーズ以上に増え、2025年から、世界的キャラクターであるハローキティとのコラボレーションを開始し、世界中から愛される存在のキティちゃんと一緒に、日本の農畜産物をさらに応援していきます。日本の農畜産物のファンをどんどん増やしていきたい、そんな想いが込められています。

笑味ちゃんとハローキティが向かい合い、たくさんのメッセージを伝えます。コラボにより、さらに訴求が上がる効果的なデザインとなりました。

―最近も、新たなオリジナルIPの開発が決定したそうですね。今後のプロジェクトで、特に挑戦したいアイデアや方向性はありますか?

今後も、新しいオリジナルIPを続々と世の中に出していく予定です。
ブランドの認知度を高め、ブランドのファンを増やし、さらにはヒットを生み出すことに貢献ができると思っています。また、エンターテイメント性も重視し、見て楽しいコンテンツを提供することで、ブランドの価値や人気をさらに高めていくつもりです。私たちの目標は、ただ商品が売れるだけでなく、消費者に感動や楽しさを提供し、長期的な関係を築くことです。

―最後に、IPを活用する上でのポイントはありますか?

まず、そのキャラクターの唯一無二のオリジナリティや世界観をつくりあげ、それを守り、長期継続して大きく育てる姿勢が重要です。さらに、守るだけではなく、時代と環境の変化に合わせて、最新技術も古き良き情緒も取り入れながら、その世界観を発展させ、新しい展開を生み出すことが大切です。また、制作者チームがそのキャラクターや原作を愛することも、クールなデジタル社会において、成功をもたらす答えの一つだと思っています。

今後も、大垣を始めとするADKマーケティング・ソリューションズおよびADKグループのクリエイターの活躍にご期待ください。



【本件に関するお問い合わせ】

ADKホールディングス

 経営企画本部 PR・マーケティンググループ 大沢 / 丸山 e-mail:mspr@adk.jp

ADK Marketing Solutions Inc.