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ADKでは年に1度「生活者総合調査」という関東・関西エリアに住む1万人以上を対象とした大規模なアンケート調査を実施しています。この記事では、新型コロナ感染症に伴う意識・行動の変化をテーマとした質問の回答から、様々な不安やそれに伴う行動の自粛が広がる中で、コロナ禍の生活者が行動するきっかけとなる視点を考察します。
なお、本調査は2020年7月1日~7月19日にかけて関東・関西エリアに住む約17,000人を対象に実施しました。緊急事態宣言が全国で解除されて約1か月が経過、新たな日常が浸透し始め、感染拡大の第2波への危機感が高まり出した時期です。その点についてはご認識の上、お読みください。
今回の調査では、新型コロナの影響を大きく受けた「外出を伴う行為・サービス利用」の再開を妨げる理由を探るため、以下に挙げたそれぞれの行為・サービス利用についての態度を過去1年利用経験者に聴取しました。
表1
各行為・サービス利用に対する態度は、次の図に示した質問から次の4つに分類しています。 「変化なし」コロナ禍で利用頻度の低下や自粛なし 「再開意向」近いうちに利用を予定している・利用したいと考えている 「態度未定」再開意向はないが、利用控えも考えていない 「自粛継続」しばらく利用を控えようと考えている
図1
各行為・サービスについて、その構成比を集計した結果が次のグラフです。
図2
ここでは自粛継続率が高い行為・サービスを上から順に並べています。自粛継続率が最も高いのは海外旅行で、7月時点で過去1年利用者のうち約6割が自粛を考えています。続いて、新型コロナのクラスター発生報道もあった劇場・ライブハウス、カラオケボックス、そしてテーマパーク・遊園地の利用も再開のハードルが高い様子が見て取れます。 一方、スーパー・コンビニ、理美容室、家電量販店などの生活インフラに近い店舗業態は、7月時点で変化なし、または再開意向率が高い状態です。一時的に需要が大きく減少した国内旅行は「再開意向」が「自粛継続」を若干上回っており、7月下旬から始まったGoToトラベルキャンペーンはその意向を更に押し上げたものと思われます。
次に、利用再開も自粛継続も決めかねている「態度未定者」と「自粛継続者」を『非再開意向者』として、サービスカテゴリごとに、それぞれの理由を尋ねました。
図3
サービスカテゴリによって若干の違いはあるものの、共通して最も多いのは『感染不安』であり、交通・旅行においては非再開意向者の84.4%が感染不安を理由に利用を控えています。次に多いのは、「世の中で多くの人が利用を控えている」から自身も利用を控えようと考える『同調圧力』。そして、「節約」あるいは「家計が心配」といった『将来不安』を背景とした理由も高くなっています。特に、外食や店舗での買い物といった日常シーンにおいては「節約」意識の高まりがうかがえます。 コロナ禍における行動再開を阻む『感染不安』については、企業・生活者の双方で対策も浸透しており、ワクチン・治療薬をはじめとした医療体制の確立が待たれますが、それに加えて『同調圧力』や『将来不安』の心理にいかに対応するか、ということも2021年も当面続くであろうウィズコロナの環境において、重要なテーマとなるように思います。
「後編」では、コロナ禍中で生活者の行動のきっかけをつくるためのポイントについてご説明します。
統合チャネル戦略センター データソリューションユニット リサーチデザイングループ長
林哲也 IT系コンサルティング会社、マーケティングリサーチ会社を経て、2016年ADK入社。ADK入社後、メディアプランニング、リサーチ・データ解析業務を担当。2020年1月~「ADK生活者総合調査」など自社調査の企画・運用に携わる。