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コロナ禍での顧客との繋がり進化 -ファンエンゲージメント-

ニューノーマル

前回の記事では、新型コロナをきっかけとした私たち生活者の生活様式の変化を3つのRで説明させていただきました。

Replace: 生活様式のデジタルシフト。サービス選択の主導権は顧客に。
Reflect: リアルとデジタルの境目がなくなる=ミラーワールド化に。
Reconnect: つながる価値の再認識。対面・非対面に関わらないリアルなつながりへ。 

こうした生活者の変化は、多くの企業にとって、顧客との繋がり方や繋がる場、接点の再検討という新しい課題を生みました。ただ、この課題は自社固有の課題ではなく、業界全体の課題であり、さらに企業の規模の大小に関わらず、同じスタートラインで、変化への対応が迫られている課題でもあります。すなわち、この課題へ取り組むことが、業界内における順列を変えるような成果を生む可能性があると考えています。

今回、テーマとして記載しました「ファンエンゲージメント」とは、顧客/ファンを知り、オンオフ含めた多くの接点で繋がり、届け、動かす、仕組みと仕掛け両面のアプローチです。そのアプローチが、まさに今顕在化している企業と顧客の繋がり方の進化という課題に適した取り組みなのではと考え、そのファンエンゲージメント実行に向けたalphaboxのフレームワークについて解説させていただきます。

alphaboxのファンエンゲージメントツリー

alphaboxのファンエンゲージメントツリーとは、オンオフを融合させた接点で顧客・ファンとの繋がりを強化するファンエンゲージメント実行のためのフレームワークです。そのフレームワークは、大きく2つの要素によって構成されています。まずは、顧客・ファンとの繋がる場、接点に関する3つのタイムフレーム。そして、そのタイムフレームを支える3つのベースです。まずは、3つのタイムフレームについて、説明させていただきます。

顧客・ファンとつながる3つのタイムフレーム

スタジアムや球場の来場者にとって、お目当てはもちろん試合であり、選手であり、試合結果や選手のパフォーマンスが来場者の次回の観戦や、家族友人への推奨に影響を与えると言われています。それゆえ、プロスポーツチームは、良い試合結果、パフォーマンスを来場者に提供するために、日々チーム力向上に努めていますが、一方でそれらは自チームだけで提供できるものではなく、相手チームがあって初めて提供できるサービス・商品となります。プロスポーツの経営とは、まさに自社・自チームだけでコントロールできない試合や試合結果を提供する事業であり、だからこそ今、プロスポーツチームは自社でコントロールできる領域において、「来てよかった!」「また来たい!」を生むためのファン・顧客とのつながり強化、各種サービス提供を進めています。

 

そのスタジアムや球場内外でのつながり強化を実施する際の指針となるのが、3つのタイムフレームです。「Before/試合前」「During/試合当日・中」「After/試合後」のそれぞれに合わせて、ファンの感情やニーズの起伏に合わせて、どう接点を作るか、そして何をそこで提供するかが試合内容+アルファの価値をファンに提供することに繋がります。3つのタイムフレームにおける具体的な展開例をいくつか挙げさせていただきます。

Beforeでは、観戦見込み客に対し、メールやSNSなどの接点を活用したチケット購入促進をはじめ、「どこの座席を買うべきか分からない」というライトファンに向けた座席のリコメンデーション、さらにコアファン向けには、スターティングイレブンや試合結果の予想など、試合観戦までのハードルを下げる、そして試合に向けたワクワクを高めるような施策展開があります。

Duringでは、スタジアムや球場での観戦体験をより快適に、より熱狂できるサービスが見られます。快適という点では、ハーフタイムやイニングの合間の売店やグッズの行例を避けるためのアプリを通したオーダー、決済、さらに座席までのデリバリーといったサービスがあり、また熱狂という点では、アプリからの光の演出コントロールによる応援の一体化を楽しむものや、MVPの投票、さらにはコアファン向けの審判目線など別アングルでのLIVE動画視聴といったものまで、快適と熱狂の両面から様々なサービスが生まれています。

最後に、Afterでは、試合後の熱狂の余韻を持続させるため、また次回観戦を促進するために、スタジアム近くでのレストラン、居酒屋の紹介から、試合の詳細のスタッツ、ハイライト動画、個別のメール案内などが挙げられます。

スタジアムや球場がファンエンゲージメントの中心ではありながらも、その内外でのつながり強化のためには、スマホやアプリが大きな役割を担っていることは各種事例からも明らかかと思います。ただ、こうしたファンのセグメントや、タイムフレームをどう理解し、コンテンツやサービスをどう届けるのか。この3つのタイムフレームでのファンエンゲージメントを実行するためには、それを支える3つのベースがあります。

3つのタイムフレームを支える、3つのベース

3つのタイムフレームを支える、3つのベースとは、顧客を知り、顧客に届ける「仕組み・システム」、その仕組みによって届けられ、顧客を動かす「仕掛け・コンテンツ」、そして仕組みと仕掛けを管理し、顧客を動かし続ける「体制」です。
全てが完璧に出来上がらないとファンエンゲージメントが実行できないかと言われれば、そうではありません。顧客を知るシステムがなかったとしても、調査やインタビューなどを通して顧客を知り、顧客を動かすコンテンツを作ることも可能です。ただ、一過性で終わらない、再現性、継続性のある繋がり作りをしていくためには、仮説をもとに顧客に対するアプローチを続けつつ、顧客の反応を得る、顧客をより理解するためのシステム構築に取り組むことが必要となります。

 

ファンエンゲージメント実行に向けて

どこから手をつけていくべきなのか。それは今、何が分かっていて、何が分かっていないか、何ができていて、何ができていないのか、企業の状況によってもちろん様々な取り組み方が考えられます。
ただ、一つポイントを挙げるとするならば、ツールや各接点でのコンテンツ、施策作りの前に、企業が顧客に提供する理想の体験フローの設計がファンエンゲージメント実行の第一歩になるということです。ファンエンゲージメントは、マーケティングや営業など、単一の部署だけで実行はできません。複数の部署をまたいで、同じ理想、ゴールを持つことができなければ、顧客が歓ぶ理想の体験ありきではなく、導入されたツールなど仕組みにできる範囲の中で、仕組みに合わせたコンテンツ、施策開発になってしまいます。下記に記載した通り、現状を理解した上で、理想の体験フロー設計、そして理想のフローを実現するための仕組みづくり、仕掛けづくりが、我々がお勧めするファンエンゲージメント実行に向けた検討プロセスとなります。

 

スポーツと一般企業のファン・顧客との繋がりは決して同じではありません。顧客の感情的にもスポーツの方がよりファンを作りやすいカテゴリーですが、オンオフを融合させたプロスポーツのファンエンゲージメントのエッセンス、フレームワークは、一般企業でも間違いなく活用できると考えています。新型コロナによって変化した顧客と繋がりを作る、繋がり続けるアプローチとして、ご参考になれば幸いです。

 

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加藤裕樹
ADKと日本IBMの共同ユニットalphabox所属。「DXを通じて、CXを実現する。」というミッションのもと、金融企業からプロスポーツチームまで多様な業種において、マーケティング視点でのDXを支援。

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