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COVID-19感染拡大防止を念頭に置いた生活が始まって早くも半年が経とうとしています。6月上旬に『定点観測調査から見るStay Home生活下の購買行動変化』というタイトルで記事をアップしましたが、ADKではその後も2か月に亘り定点観測調査を行ってきました。今回は後半2回の結果も踏まえ、3月~6月の人々の心理変容について簡単にまとめたいと思います。
2-1. 第一回調査 実査日:3/18 調査対象者:全国在住の15~69歳男女 手法:インターネット調査 サンプル数:1,200サンプル 調査会社:楽天リサーチ
2-2. 第二回調査 実査日:4/30 調査対象者:全国在住の15~69歳男女 手法:インターネット調査 サンプル数:1,128サンプル 調査会社:楽天リサーチ
2-3. 第三回調査 実査日:5/29 他条件は第二回と同様
2-4. 第四回調査 実査日:6/30 他条件は第二回・第三回と同様
非常事態宣言の解除から3か月が経とうとしており、一時期よりは厳格な自粛生活ではなくなったものの、やはりコロナ前よりは依然外出しづらい日々が続いています。そんな中、家での生活をより充実させようという方向に舵を切る人が多く見られるようになりました。日頃アクティブに生活している層において、緊急事態宣言が明けた第三回調査にて調査掃除用具や照明器具などを買い足すことで家の住環境を向上させようとしたり、ゲーム機やインターネット環境整備にお金を遣うことで家でのエンターテインメントを充実させようとしたり、生活スタイル自体をイエナカ中心にシフトさせている様子が窺えます。
※第三回調査結果
また、10代~20代の若年層では「これからの世の中に期待すること」として「インターネットでより多くの商品 / サービスを購入できるようになってほしい」や「家の中で楽しめるエンタメが増えてほしい」「リモートワークが進んでほしい」「オンライン学校教育が浸透してほしい」といった項目が高く上がっており、Stay Homeを受容したうえで充実した生活を送りたいという柔軟な気持ちが窺えます。この年代はもともとデジタルネイティブであるということもあり、様々なことをバーチャルで楽しむということに抵抗が薄いのも影響していそうです。 ※第四回調査
一方で、現在の社会環境では家事・炊事を担うことが多い30-40代女性では自炊疲れも見られます。第三回・第四回調査では緊急事態宣言明けに再開したいことを聴取していましたが、当該層では「外食」という回答が多く、自分で食事を作る生活に疲弊感があったものと想像されます。今後は外食やテイクアウトもうまく活用しつつの生活が望まれるのではないでしょうか。
※第四回調査
ゴールデンウィークや夏休みもあり、今後再開したいことを見ると帰省や家族での国内旅行など、ごく親しい人と行く行楽を再開したいという意向が強く見られます。その一方で特に若年層で仕事はリモートワークで行いたいという意向が増し、また「友人・仲間とのコミュニケーションは常に大切にしたい」という価値観項目のスコアが下がっているなど、しがらみ的な人間関係からの“解放”を感じた人がこれを機に断捨離し始めている様子も伺えます。今後は薄い関係はより薄く、狭くて深い交友関係がより強く支持・志向されるといった「二極化」がより一層進むことが考えられます。
※第四回調査 / 再掲
前回記事でも述べましたが、所得が高めの人は生活への影響が弱く、所得が低めの人への影響が強く見られるといった不均衡が見られます。所得が高めの人の中でもこれからへの不安は大きく、Stay Home生活を通して「本当にお金を遣うべきはどこなのか」を考えた人も多くいるでしょう。商品・サービスの選択基準を問う設問への回答は回を追うごとに減少傾向にあり、消費自体を絞りたいという意向も浮き上がってきます。そんな中で「品質・コスパ・安心感」は基本的な点でありながら、やはり今後の世の中でも重視されていきそうです。また、「センスがよい」「定番である」「自分らしい」「人気・流行」といった要素はもともとのスコアはさほど高くないものの第二回調査⇒第三回調査でのスコア減少率が低く、この項目を重視する人口はこれまでと大きく変わらないであろうことが窺えます。一方で「憧れがある」「商品バリエーションが豊富」「社会問題の解決に貢献している」といった要素は減少率が高く、今後の世の中ではあまり支持されない要素になってくのかもしれません。憧れではなく等身大で選ぶ、かつ現在は自分の生活が不安定な中なので社会問題といった大きな視点で商品を選ぶ余裕がなくなっている人が多いのかもしれません。
今後の消費行動を見るうえで、キーワードになりそうな点を挙げました。「一人 / 少人数で」「バーチャル」は言わずもがなですが、それに加えて「無理をしない」消費がこの先広がりそうだと考えています。生活・人間関係・消費行動いずれにおいても「無理をしないこと」が今後のトレンドになってきそうです。生活面では「できるだけ家にいることを意識しつつ、無理に引きこもらない」「自炊やおうち生活の充実も、無理せず外食やテイクアウトに頼るところは頼る」といった点、人間関係では「しがらみ的な人間関係からはできるだけ距離を置く」といった行動がそれに当たります。消費行動でも「憧れよりも等身大の商品を選ぶ」「上昇志向を持ってなりたい自分になるよりも今の自分を大切にする」といった価値観が広がりそうです。今後感染状況の変化により生活環境が変わればこの価値観も変化していくものと思われますが、Stay Home生活で皆が「自分はここで無理をしていたんだな」ということに気づき始めたと考えると、Withコロナ生活の定着とともに「無理をしない」価値観も長く定着することになるかもしれません。
エクスペリエンスプランニングユニット
和久井 鉱一 2001年ADK入社。生活者を突き動かす体験価値の創造を追求すべく、オンオフ統合のコミュニケーションプランニングに従事。アプリ、ゲーム・トイをはじめとするエンタメ/コンテンツ、酒類、タバコ等の嗜好品カテゴリーの対応に強み。