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Twitterにみる新型コロナについての世の中の関心とこれから(2)

意識・価値観

前回「Twitterにみる新型コロナについての世の中の関心とこれから(1)」と題してツイート数の推移と関連語の分析を行いました。今回はその後半としてTwitterのリツイート(RT)を取り上げ、それ通じて生活者がこの期間新型コロナにどう向き合い意識変化を起こしてきているのかを考察します。

1.種類別ツイート分析

まず前回同様2月後半から7月前半まで、半月ごとの「新型コロナ(「コロナ」等を含む)」を含むツイート数を抽出していますが、今回はツイート種類別に集計しました【図1】。これを見るとわかるように「新型コロナ」を含むツイートの多くはRTから構成されています(「メンション」とは“@ユーザー名”を含むツイート、「オーガニックツイート」とは書き手の通常のつぶやきです)。

2.時系列RT分析

RTは共感した話題、あるいは大切だから人に知らせたいと思う話題をシェアするために使われます。RT上位の話題をみることで、その時、人々がどんな話題に意識が向き共感していたかが分かると考えられます。
では実際に「新型コロナ」に関してRTされたツイートを時系列で分析していこうと思います。以下の表は各時期別のRTトップ3をリストアップしたものです。

*抽出はホットリンク社BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長を使用。RT数は1/10のサンプリング抽出数。RTキャンペーンのものを除く。以下同様です。

2月後半はライブなど「イベント中止」に関するツイートが上位に、3月前半はマスクや消毒液の不足が社会問題化していた時期でドラックストア絡みのツイートが上位にきています。3月後半には志村けんさんの訃報ツイートが上位にきました。RT数も多くショックの大きさを物語っています。

4月前半は緊急事態宣言が発令され感染者が急増した時期です。新型コロナそれ自体や症状を伝えるツイートが上位にきており、病気それ自体への関心の高まりが感じられます。4月後半には医療者支援やコロナ克服に関するツイートが上位で、新型コロナ乗り越えようとする意志に対して共感が集まっているように思えます。5月前半には大阪独自の警戒態勢を伝えるツイート、新型コロナの影響で仕事が止まった人を助けるためのツイート、ウイルス発生の原因に関わるようなツイートが上位にきています。病気の問題から次第に社会全体の動向に関心が移ってきたように思えます。

緊急事態宣言が解除になった5月後半は「マスクしてクレームをつけられたことに驚いた」、「たいして被害がなかったと言う人がいるがそれは結果だ」というツイートが上位にきています。緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナへの油断を諫めるような内容に共感しているようです。6月前半はイベント中止を告げるツイート、6月後半は新型コロナで事業が行き詰まり助けを求めるツイートが上位にきていました。新型コロナそれ自体より、新型コロナが生活に与える影響についてのRTが多くなってきた時期でした。

7月に入り新型コロナの感染者が再度増加すると、再度感染者増のニュースや検査、感染予防についてのツイートがRT上位に挙がってきました。しかし3月後半から4月前半の感染者急増期と異なり、給付金や保険の話題など「役に立つ情報」をRTしようという意識も見えるようです。

3.RTにみる新型コロナへの向き合いの推移

上位RTされる話題を見ると、生活者が新型コロナへの向き合いについて次の3つの変化があったように思われます。

①反応の変化:感情的反応(困惑・迷惑)→感情的反応(パニック)→理性的反応
②意識の変化:迷惑な存在→病気を理解したい→社会への影響を考えたい
③自分との距離感の変化:他人事→自分事→社会事

①反応の変化についてですが、最初のころは「困った」「迷惑だ」と反応し、著名人の訃報を受けてパニック的に反応するなど「感情的反応」が見られました。しかし4月以降はウイルスや病気を理解したい、あるいは状況を客観的に把握したいという「理性的反応」に変化し、その後一貫してその傾向は続きます。

②意識の変化については、最初のころはイベント中止やマスク・消毒液不足などに意識が向き生活を破壊する迷惑な存在として捉えているようでした。しかし次第にウイルスや症状そのものに意識が向くようになり、さらには困っている人への対応など社会全体への影響について意識が向くようになってきています。

③自分との距離感の変化で考えると、最初は「他人事」であり危機感も乏しかったように思います。感染者が増えて急に「自分事」になりましたが、次第に「社会事」として新型コロナの問題を捉えるようになってきているようです。

このように考えると新型コロナに対するわれわれの見方も少しずつ変化し、広い視野で物事を捉えられるようになったという意味では「進化」したとも言えそうです。

7月後半現在再度感染者が増加していますが、3月末から4月前半の最初の感染者拡大の時とは社会の雰囲気がやや違っています。悪く言えば危機感が乏しい感じがし、よく言えば落ち着いているのですが、多分上記のようなプロセスを一度通過してきたので、新型コロナ問題をより客観的に、経済活動を含む社会との関わり合いの中で考えることができるようになっているからではないでしょうか。

もしそうであれば、感染者の再度の拡大に対しても社会不安に陥ったり過度に自粛し経済にダメージを与えたりということではなく、理性的に社会全体でこの問題を乗り越えて行けそうです。

そういう期待を持ちながら、引き続き世の中の動向を見て行きたいと思います。

統合チャネル戦略センター データソリューションユニット

統合チャネル戦略センター データソリューションユニット

宇賀神 貴宏
生活者やメディア(特にクチコミやソーシャルメディア)、ブランドの調査研究、将来予測レポートの作成などを担当しています

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