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国内では2月以降今日まで新型コロナの話題が途切れることがありません。2月のダイヤモンドプリンセス号の問題を皮切りに、3月の学校休校措置やマスク不足、4月の緊急事態宣言、5月その解除を受け、“新しい日常”としての生活復興が模索されている中での7月に入ってからの感染再拡大と、話題を変えつつも私たちの関心の大きな部分を占めてきました。
これらの期間、私たち(世の中)はどう考えてきたのか、そしてこれからどちらに向かおうとしているのか? 私たちの関心事をダイレクトに反映する(と思われる)Twitterのデータを使って、これから2回に分けて考えてみたいと思います。
まずツイート件数を見てみましょう。2月後半から7月前半まで、半月ごとの「新型コロナ(「コロナ」等を含む)」を含むツイート数を抽出して分析しました【図1】。
図1を見ると新型コロナに関して大量のツイートがなされていたことがわかります。2月後半には既に半月で1,300万を超えるツイートがあり、それが徐々に伸びて4月前半には1,800万を超えました。それだけ世の中の関心が高かったことが分かります。しかし4月下旬以降急激に低下し、6月後半にはピーク時の1/5程度まで落ち込みます。7月になり再び少しだけ増加してきています。
これは、感染者数の推移と関係しているのでしょうか? 次にツイート数と新型コロナ感染者数とを重ね合わせてみました【図2】。左がツイートの目盛、右が新規感染者数の目盛となります。 これを見ると感染者推移とツイート推移が必ずしも一致していないことがわかります。
感染者がまだわずかしかいない2月後半~3月後半には既に新型コロナについて大量のツイートが交わされていました。4月前半に新規感染者が急激に増えていますが、ツイート自体は急激には増えていません。4月後半以降新規感染者数減少に合わせてツイート数も減少しますが、7月前半の感染者再拡大の局面ではツイートは同じ程度増加しているわけではありません。
ツイートを「世の中の関心」と考えると、2月~3月にかけては実態以上に関心があったし、7月前半のタイミングでは実態の深刻さに比べ関心が高まっていないということが言えるかもしれません。もちろんツイートはマスコミ報道などによる影響を受けます。新型コロナ感染拡大初期にはマスコミの大量報道に影響されたろうし、私たちも初めての事態ゆえ必要以上に不安を感じていたりしたこともあったでしょう。7月にツイートが伸びていないのも「コロナ」という言葉を使わずに「感染」「マスク」など関連話題をツイートしていることで今回捕捉できていない可能性もあります。しかしそれにしても新規感染者の増加ぶりに比べてツイートの増加が少ない7月の状況は、新型コロナへの関心が少なくなったことの反映に思えます。感染者増加傾向である現状、私たち一人一人が改めて感染予防の意識を持ち続けていきたいところです。
それぞれの期間のツイートの関連語(「新型コロナ」と一緒に語られているワード)を分析してみました。「新型コロナ」のツイートは80%以上がニュースや他人のツイートをリツイートしたものなのですが、その中でもおよそ15%前後を占める書き手の自然なつぶやきである「オーガニックツイート」に注目し、それの関連語を出現の多い順に上位10語抽出してみました。
まず注目できるのは一貫して「感染」「感染拡大」という関連語が上位に来ていることです。ツイート原文を見ると「感染者数」「感染症」「再感染」などとして使われていることが多いようです。新型コロナの「病気」としての側面を話題にしていると言え、背景には感染への不安や恐れがあるようです。
時期によって順位の変わる関連語もあります。「影響」は新型コロナのツイート数が多かった3月・4月には順位が低かったのですが、緊急事態宣言が明けた5月後半以降上位に来るようになりました。「新型コロナの影響で〇〇」「影響のないように」などと、新型コロナの「社会や生活への影響」を話題にしている言葉です。感染者数が低下し、改めて生活再建を意識することで出てきた言葉と言えそうです。7月になり感染者が再拡大するなかで再び順位が低下しました。感染再拡大で生活再建に曇りがでることがとても心配に思われます。
その他に、「マスク」も2月後半から7月前半までずっと関連語として登場しており関心の高さがうかがわれます。「緊急事態」「緊急事態宣言」については発令された4月前半から解除された5月前半まで上位におり、6月にはランク外になりましたが、7月再度登場しています。感染再拡大で「緊急事態宣言」を求める意見が出ていることを反映していることでしょう。
ツイート数の推移や関連語の推移を見ることで大まかに「世の中の関心」の推移や内容を知ることができます。これからのことを考えると、7月の感染者再拡大フェーズで以前ほど新型コロナに対する関心が高まってないこと(これは感染リスクを上げる可能性がある)、一方で新型コロナに関しては一貫して「感染」への不安が今でも潜在的には強くあることが推測できます。
7月の連休から東京を除いて「Go Toキャンペーン」が始まり、社会生活を正常化する取り組みが始まっていますが、潜在的な「感染への不安」が取り除かれるまでは、残念ながら根本的な正常化は難しいと感じます。逆に個々のマーケティングサービスに関して言えば、「感染への不安のない状態を作ってあげること」が生活者を動かす基本的な鍵になるとも言えそうです。
次回は何がツイートされたかを通じてコロナ禍における生活者の意識推移を見ていきます。
統合チャネル戦略センター データソリューションユニット
宇賀神 貴宏 生活者やメディア(特にクチコミやソーシャルメディア)、ブランドの調査研究、将来予測レポートの作成などを担当しています