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アフターコロナは「REC」で攻める(後編)

ニューノーマル

前回の前編では過去の歴史を振り返ることにより、10年後には今の我々では想像もできないような世界が広がる可能性、そして今後の1,2年がその分岐点となる可能性について解説しました。疫病によるパンデミックを予言し的中させたと話題のMicrosoft創業者ビルゲイツ氏ですが、「私たちはいつも、今後2年で起こる変化を過大評価し、今後10年で起こる変化を過小評価してしまう。無為に過ごしてはいけないんだ。」とも言っています。彼の予言は的中します(笑)。今からの1,2年は、我々ビジネスマンにとって非常にエキサイティングな期間になります。これはチャンスです。

さて前置きが長くなりましたが、この1,2年を有為に過ごすための「REC」という視点をご紹介して前編は終了しました。後編では「REC」の考え方について解説いたします。なお、「REC」に影響を与える生活者の変化「3R」があります。「REC」は企業としての進化のステップ、そして「3R」はその裏にある生活者の変化、という関係性で表裏一体です。3R」はalphaboxの加藤が寄稿していますので、併せてご覧ください。

REC
Recovery(現状復帰):短期(欠けたオフラインをオンラインで補完)
Evolution
(変化に合わせた進化):中期(新しい企業と個人の繋がり方)
Creation
(次世代に向けた創造):長期(新しい企業と企業の繋がり方)

Recoveryはシンプルです。コロナ禍によりオフラインの活動が大きな制限を受けているため、それをオンラインでカバーしようという試みです。私自身、社内はもとよりお客様との会議も殆どがオンラインになりました。アパレル業界では店頭接客と同等のクオリティを提供する「オンライン接客」への取り組みが先行していますが、アパレル大手のTSIホールディングスでは(時間が余っている)店内の販売員がECの接客をリアルタイムで行うアプリの使用を開始しました。積水ハウスはモデルハウスが閉鎖となったためVRゴーグルを無料配布し、バーチャルモデルハウスで内覧会を実施しています。但しここで重要なことは、これらは“量的変化”だということです。10の業務がコロナ禍で3になり、減少した7を取り戻すため、今までのオフライン活動と同じ内容をオンラインで行うということです。これは即ち “置き換え”であり、オンオフ比率の“量的変化”です。Recoveryは当然必要なことですが、同時にコロナ禍を受けた新しい価値観に対応した“質的変化”に取り組むことも重要です。

Evolutionはコロナ禍を受けた“質的変化”にフォーカスしていますが、これは新しい企業と個人の繋がり方をテーマとしています。この繋がり方の変化は、Recoveryで起こった“量的変化”がベースにあります。上述の事例のようにオフラインの活動がオンラインに置き換えられていくと、オフラインとオンラインが同質化した“ミラーワールド”という現象が起こります。

例えばWhyKumano Hostel & Café Barの「オンライン宿泊」は有料(1,000円)ですが、連日満室でした。ここでは見知らぬ他のオンライン宿泊者やオーナーとの交流など、様々な体験があります。オンライン宿泊者のうちの何パーセントかは、これから実際に旅行で訪れると思います。もしかすると既に訪問したことがある人が、オンライン宿泊をしたのかもしれません。今後は時間とお金に余裕があれば現地宿泊で、そうでなければオンライン宿泊で、という時代が来るかもしれません。また私の娘は自宅学習の期間は自室で勉強をしていたのですが、その間ずっと友達とスマホで繋がっていました。特に何かを話すではなく、勉強しているという空気感をシェアしているだけです。今は学校に行っていますが100%ではない為、スマホによる空気感のシェアも併用しています。このようにオンとオフが同質化したミラーワールドにおいて、人々がそれらをシームレスで行き交うようになりました。この“質的変化”に対応した新しい企業と個人の繋がり方についての対応が求められています。

Evolutionのテーマは新しい企業と個人の繋がり方でしたが、Creationは新しい企業と企業の繋がり方がテーマです。これは“エコシステム”とも言います。企業活動のオンライン化が進むに連れて、様々な企業がオンラインで連携をし始めます。

シンガポールにDBS Bank Limitedという銀行があります。2016年と2018年にWorld’s best digital bankの称号を獲得しており、オンライン化を積極的に行なっている銀行です。銀行ですが、自社のマーケットプレイスで家も車も旅行も電気も売っています。このマーケットプレイスに参加している企業はDBSの顧客にアプローチ出来るというメリットがありますし、DBSにとっては家を買う人には住宅ローン、車を買う人には自動車ローンを売れるというメリットがあり、WinWinの関係性を構築しています。今までも企業間連携は存在していますが、それがオンライン(データ)で繋がることにより新しいビジネススキームが生まれています。なお、今はデータがサイロ化して苦労している企業も多いと思いますが、早く自社データを整備しないとエコシステムには乗り遅れてしまいます。

さて、「REC」をまとめると以下のようになりますが、これは企業進化のステップ論です。

Recovery:企業のオフライン活動をオンライン活動へ置き換える。
Evolution
:オンオフが同質化したミラーワールドをシームレスに行き交う個人と企業の新しい関係性づくり。
Creation
:企業活動のオンライン化がもたらす “エコシステム”という企業と企業の新しい関係性づくり。

今回の話は初めて聞いた新しい話ではなかったかもしれません。本質的な部分では、もう10年も言われ続けていることです。しかしながら、10年も言われ続けていながら出来ていないことも事実です。最後に、この言葉をお伝えしたいと思います。

特別なことを成し遂げるために(イチロー氏)
「特別なことをするために、特別なことをするのではない。 特別なことをするために、普段通りの当たり前のことをする。」

我々ビジネスマンが普段思っていることを諦めずにやり遂げると、世の中が大きく変わるのではないでしょうか。

alphabox マネージングディレクター

alphabox マネージングディレクター

藤田 岳志
ADKと日本IBMの共同ユニットalphaboxのADK代表。「DXを通じて、CXを実現する。」をミッションに、事業戦略、マーケティング戦略、エグゼキューションまで一気通貫で手掛ける。

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