ADK前身の旭通信社に入社して最初に携わったのは、雑誌業務だったんです。徐々にメディアプランニングにも関わるようになり、出版社にとらわれず、最適な雑誌を選んで取り組んでいました。
その後、営業に異動したんです。クリエイティブからプランニングまで、そこで広告会社の流れを学びました。再びメディアプランニングの部署に戻るのですが、当時はメディア活用の企画をベースにしたものが多くて。その影響だと思うのですが、今のデータ分析によるプランニングはもちろん、「最終的にどんなアウトプットが消費者に届いているか」までを大切にするようになりました。
2012年からは、ニューヨークに2年間ほど研修する機会に恵まれまして、ニューヨーク大学でプロジェクトマネジメントを学んだんです。スケジュールやタスクの整理に加えて、目の前の案件を終えて検証して、次につなげていくサイクルを意識するようになりました。また、業務の属人化が防げるようになったと思います。「ナレッジをどう蓄積して効率的に使い、時間とコストを削減するか」という方法論を体系的に教わることができたんです。さらに、グローバルのメディアエージェンシーであるGroupMでの研修で、メディアパートナーとしての付き合い方や向き合い方を習得しました。
日本はクリエイティブ業務から営業などワンストップで行うのが普通ですが、アメリカは基本的に分業制です。ブランドやメディアのエージェンシーなど、業務が会社によって細分化されています。大勢のメンバーをバランス良く束ねるマネジメント力もここで学びました。この経験が日本に戻ってチームづくりをする際の指針になっています。
外資系のクライアントとの仕事が多いので、なるべくグローバル基準で考え、信頼され続けることを意識しています。日本では比較的短い期間でプロジェクトを進めていきますが、外資系の企業では2〜3年単位のスパンが主流です。短期的な関係だと結果検証をしても良かった点だけ伝えがちですが、長期的な関係を築くには、改善すべき点を的確に伝えていかなければなりません。ダメなところはちゃんとダメだと。そうしないと深く信頼されるパートナーになれません。そのときだけを見るのではなく、未来へつながるアクションを示すのが必要だと考えています。
また、メンバーが代わっても円滑に進められるよう、ソーシャルメディアやアドのオペレーションの担当などの役割を明確にする組織づくりを心がけました。グローバルのトップクラスのクライアントにとって、メディアを使ったコミュニケーションはとても重要なものなんですよね。だから、そこに対する知見や調査結果も膨大にあるんです。本国からどんどんやってくる目標や戦略を、日本市場にアジャストができるのか、難しいのか、その解釈もとても重要視しています。ただローカライズするだけであれば別にADKじゃなくてもいいという判断になりますから。+αの価値を付加できる存在であり続けないといけません。
そうした価値提供の代表的な例が、メディアプランナーが直接クライアントとの窓口になる体制をつくったことです。クライアントの持っている高い知識と同じレベルで直接会話できる体制があることは、大きな価値になっていると思います。
メディアプランニングに代表されるように、チャネルも複雑化しています。統合ソリューションディレクターとして大切なのは、俯瞰力だと思っています。例えば、デジタル戦略を考えるために最低限のレベルは必要ですが、全員が専門的な深い知識を習得する必要はありません。チームの中に何人かそこをカバーできる人がいればいいと思います。ただ、急速に進化する、デジタルメディアの知識のアップデートは必要だと感じますね。そうじゃないと、提案に盛り込んでアウトプットしていくことはできません。
私自身、営業やプランナーなどさまざまなことを経験してきたので、さまざまなことを広く経験していることが俯瞰力の土台になっています。結局、いろいろなことを経験しないと視野は広がりません。スタッフをアサインするマネジメント能力もそうですよね。エンジニアやデータアナリストのパフォーマンスが、どれだけ大変で時間がかかるのか、理屈ではなく実感値としてなければダメだと思っています。とはいえ、その理論でいうと統合ソリューションディレクターになるのに20年近くかかることになり、それでは意味がありません。なるべく短期間で育成できるような方法を考えていかなければと思っています。
今後はメディアプランニングのプロフェッショナルとして、報酬に見合った、満足していただける価値を提供するのが目標です。クライアントにとって最適なプランニングを提供し、長く伴走し続けるパートナーであり続けたいですね。